2021年08月30日

抵当権と根抵当権の違いは?抹消に向けた準備と手続きの方法

不動産を売却するとき売主には、「所有権の行使を阻害する負担の消除」という重要な義務があります。

所有権の行使に制限を与える負担には「抵当権」と「根抵当権」があります。

これは、住宅ローンや不動産投資ローンなどの融資を受けるために、物件を担保として銀行などに提供する際に設定される権利のことを言います。

万が一返済が滞った場合に、銀行が強制的に物件を売却し債権を回収できる権利ですので、不動産を売却する際には抵当権や根抵当権を抹消しなければなりません。

そこでこの記事では不動産の売却を検討されている方向けに、根抵当権の抹消に関わる手順について解説します。

抵当権と根抵当権の3つの違い

抵当権には「抵当権」と「根抵当権」の2種類の権利があります。

一般的に住宅ローンは「抵当権」を設定することが多いのですが、事業資金の融資では「根抵当権」を設定するケースが多いです。

●極度額の範囲内で何度でも借り入れできる

根抵当権と抵当権とでは以下3つの違いがあります。

1.根抵当権は極度額の範囲内で何度でも借り入れできる
2.抵当権は融資のたびに手続きが必要で手間がかかる
3.抵当権は債権額が決まっているが根抵当権は債権種類と極度額を決めなければならない

抵当権は融資を受けた金額を「債権額」として設定しますが、根抵当権の場合は、融資を受ける上限金額である「極度額」を設定します。

住宅ローンなどの場合は1度きりの借金なので、抵当権の設定でなんの問題もありませんが、事業資金は1度きりということはありません。

事業を営んでいる場合、必要なときに必要なお金を銀行から融資してもらいたいケースが多いでしょう。

しかし、普通抵当権の場合、資金が必要になった時その都度金銭消費貸借契約を締結し、抵当権設定を行わなければお金を借りることができません。

一方、根抵当は一度根抵当権設定をしておくと何度でも繰り返し融資を受けることができ、事業資金の借り入れの場合はたいへん便利な方法です。

●抹消するには根抵当権を設定した当事者の合意が必要

根抵当権の抹消は、抵当権の抹消と若干ですが違いがあります。

抵当権は融資の完済により債務が消滅すると効力は無くなります。

対して根抵当権は繰り返し融資を受けることができ、手形や小切手債権のように継続した取引に対する担保なので、自動的に担保としての効果が消滅することはありません。

担保としての効力を消滅させるには、債権者または債務者から、根抵当権の解除を申し出なければいつまでも有効な抵当権のままになります。

そのため、担保物件の売却にあたっては、根抵当権の抹消について債権者の合意を得たうえで、債務者の意思で抵当権の解除を申し出ることになります。

不動産売却に向けた根抵当権を抹消するための準備

根抵当権を抹消するには金融機関が保有する債権額と、売却代金とのバランスが重要です。

さらに根抵当は普通の抵当とは違い債権額が流動的ですので、抹消時における債権額の確定が必要です。

●残債務と査定価格を調べる

不動産の売却では準備として不動産査定を事前に行いますが、査定価格が残債務を上回るかがポイントになります。

抵当権付き不動産の売買では、売買代金から残債務を弁済するのが一般的です。

査定価格が債務を下回っている場合には、別途資金を用意して残債務を弁済しなければなりません。

つまり、査定価格の結果により次の2とおりのケースがあります。

1.残債務の金額<査定価格
2.残債務の金額>査定価格

1.はノーマルなもので何の問題もありませんが、2.の査定価格が残債務を下回る場合は、別途資金が必要です。

しかし、別途資金が準備できないこともあるでしょう。

この場合には金融機関と相談し、任意売却による債務整理を前提にした根抵当権抹消を行います。

また住み替えなどで適用される「住み替えローン」を利用するときも、同様に査定価格が残債務を下回るケースがありますが、住み替えローンの場合は根抵当権の抹消が可能です。

●元本を確定させる

一般的に抵当権が設定される住宅ローンなどは、毎月返済するごとに元本は減少していきます。

返済予定表には将来の元本残高が記載されており、いつでも借金の元本は確認できます。

ところが、根抵当権は繰り返し借りる・返す、を行うため常に元本は変動します。

不動産の売買をするときに「借金の元本がわからない」状態では、金融機関にいくら弁済するのか不明です。

そこで、売買の前に金融機関に対し「元本確定請求」を行い、借金などの元本金額を確定させる必要があるのです。

元本確定請求により借金の残高や弁済期日までの利息や手数料などが計算され、弁済すべき金額が確定します。

こうして根抵当権は元本確定により、付従性や随伴性のある普通抵当権と同様になると、抵当権の抹消登記が可能になります。

なお、元本確定する場合には民法の定めに該当する必要があります。

民法第398条の20には元本確定事由が規定されていますが、主に差押えや競売による場合の規定です。

担保物件の売買における元本確定請求は、民法第398条19の「根抵当権の元本確定請求」に基づくものになります。

具体的には次のような規定です(ただし確定期日を定めていない場合に適用)。
・根抵当権設定から3年を経過した場合に根抵当権設定者(借り入れする人)が行う確定請求
・根抵当権者(金融機関)が行う確定請求

根抵当権の抹消登記申請を行う手順

根抵当の抹消登記は難しいものではありません。自身で行えば費用も安く済みますし、最近ではオンライン申請も可能になっています。

手順を知っておけば、司法書士に依頼する場合でもスピーディーに手続きできるでしょう。

●必要書類を用意する

根抵当権の抹消手続きには、法的に必要な書類があります。

主な書類は、根抵当権者である銀行などの金融機関から送られてきます。

・登記識別情報:根抵当権設定の登記済権利証または登記識別情報
・登記原因証明情報:根抵当権を解除する日付が記載された解除証書など
・会社法人番号等:金融機関など根抵当権者の登記事項証明書(発行から3カ月以内)
・代理権限証明情報:金融機関など根抵当権者からの登記申請手続きの委任状

金融機関からの登記事項証明書(資格証明書)の有効期間は3カ月なので、期限が過ぎると無効となります。

期限内に申請手続きができるよう注意してください。

●根抵当権抹消登記申請書を作成する

登記申請は、対象不動産が存在する地域の管轄法務局に対して行います。

登記申請書は法務局のホームページからダウンロードでき、記載例もあるのであまり知識がなくても自身で作成することができます。

参照:法務局「不動産登記の申請書様式について」
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html

【作成手順1】
「登記申請書の様式及び記載例」の 「 16)根抵当権設定登記申請書」にて、申請書様式と記載例をダウンロードします。ファイルは「一太郎」「Word」「PDF」の3種類です。

【作成手順2】
登記申請書の各項目に必要事項を記入します。記入内容は金融機関から送られてきた「登記原因証明情報」にすべて記載されているので、間違わずに正しく入力してください。

【作成手順3】
登記識別情報の提出ができない場合は、その理由にチェックマークを付けます。古い登記の場合は「登記識別情報」ではなく「登記済権利証」になります。

【作成手順4】
「申請人兼義務者代理人」には申請を自身で行う場合は自身の氏名と連絡先を記入、代理人として司法書士に依頼する場合は司法書士の氏名と連絡先を記入します。

【作成手順5】
登録免許税(収入印紙)の金額と不動産の表示を記入しますが、通常は土地と建物の両方に根抵当権が設定されているので、不動産の表示も土地と建物を別に記入します。

記入内容は登記事項証明書の記載にしたがって間違いなく記入しますが、登記事項証明書には右上に「不動産番号」が記載されており、不動産番号を記入すると詳しい項目の記入を省くことができます。

最後に該当する根抵当権設定の「順位番号」を確認して記入しますが、これも登記事項証明書の左端に記載されています。

●根抵当権抹消登記に必要な費用を支払う

根抵当権抹消登記には以下の費用がかかります。

・法務局に支払う登録免許税
・司法書士に依頼した場合の司法書士報酬

根抵当権抹消の登記は1件につき1,000円です。

通常は土地と建物に根抵当権が設定されているので、合計2,000円になります。

納付は現金または収入印紙になりますが、現金納付は銀行などで納付し領収証書を貼り付ける方法なので手間がかかり、収入印紙が一般的です。

抹消登記は簡単なので自身でもできますが、代理人に依頼する場合は司法書士になります。

司法書士の業務報酬は一般的に2~3万円とされています。

買取なら抹消手続きもすべて任せられる

債務が残っていたとしてもわずかな金額であれば残債を弁済し、ご自身で事前に抹消することが可能です。

また元本を確定した結果、残債がゼロという場合もあり、この場合も事前の抹消は簡単です。

売却代金から残債を弁済する場合は、決済・引渡し時に所有権移転との同時抹消になります。

この場合はご自身で登記申請することはむずかしく、所有権移転登記を申請する司法書士に併せて依頼することが一般的でしょう。

抵当権や根抵当権の抹消は、不動産取引ではきわめて普通に行われていることです。

売却を依頼する不動産会社に不安な点があれば相談してみてください。

早く売却したいという事情がある場合には「買取」もひとつの方法です。

買取であれば、不動産会社に抹消登記の手続きもすべて任せられるメリットもあります。

一般的な買取は安く買い叩かれるといいますが、なかには相場に近い価格での買取をしてくれる業者も存在します。

不動産会社に迷ったときは「ソクガイ.jp」https://sokugai.jp/ を検討してみてはいかがでしょう。

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